[特集]
代々受け継ぐ、住まいの「資産」を活かした空間
〜梁の味わいにこだわり、
手間と工夫で新しい空間を創造〜
〈
散居村にある「吾妻建ち」の家を改装する〉
富山県砺波市の田園地帯は、屋敷林に囲まれた住まいが散在する「散居村」で知られている。そこに建つのは、切妻の妻面を東に向け、白壁で仕上げた「吾妻建ち(アズマダチ)」と呼ばれる住宅様式である。Y邸も、伝統的な吾妻建ちの住まいで、昭和5年頃に建てられたものだという。
その住まいの奥側を改装し、1階にリビングルーム、2階に子ども部屋などをつくることになった。1階はもともと洋室だったが、2階は「アマ」と呼ばれる屋根裏空間となっていた。梁や天井がむきだしで、昔は、物置や養蚕などに使用していた空間である。
「この家を見た瞬間に、直感的に『こうしよう』というのがひらめきました。実は、自分自身も吾妻建ちの家に住んでいたんですよ」と、担当者は語る。
それは、吾妻建ちの住まいのイメージを壊すことなく、独特の造りや形を活かした改装だった。
着工は9月初旬で、まずは、屋根の総改修から取りかかった。屋根の葺き替えは天候に左右されるため、気候の良い頃に済ませたいとの考えだった。
〈
先が見えない「梁を見せた空間」づくり〉
担当者がイメージしたのは、梁をあえて見せる空間。屋根裏に走る梁は、伝統の「資産」であり、重要なイメージポイントとなる。
その前に、屋根裏の強度を高める必要があるということで、梁の上下に補強を行った。
「外からやるのなら簡単なんですが、屋根がある状態で補強材を入れなければいけないので、かなり大変でした」
次の問題は、梁を洗うということだった。梁は、囲炉裏のすすなどが染みこんでいる。それを、ある程度取り除かないと塗装ができないが、洗っても洗ってもなかなかきれいにならない。
また、梁を組み込んだ形で天井や壁を造るため、下地材を梁に合わせて造らなければならない。寸法を測り下地を造っても、なかなか計算通りに合わない。
「現場の職人から連絡が入り、『どうする?』ということが何度もありました」
こんな調子では、いつ終わるかわからない、完成の見通しもつかないと、職人たちは言う。
「梁を隠して、四角い部屋にしてくれないかと言われましたね。私も一時悩みました。しかし、梁を隠したら、この家の改装をさせていただいた意味がないんです」
担当者は、今回は普通の子ども部屋をつくる改装ではないことを言い、工事を続けた。
大工は、仮の下地を造り、現場で、合わせてみては削るということを繰り返し、加工していった。やがて、趣深い木目を見せた天井や壁が出来上がった。普通の空間であれば3〜4日で仕上がる工程を、1週間以上かけて造り上げた。
独特の味わいを見せる梁は、赤松の自然な風合いを出そうと、今では少なくなった漆塗りの職人の技を取り入れて塗装仕上げをした。
〈職人の知恵と技を集め、こだわりで完成
〉
もうひとつの問題は、1階の天井にあった。階段を設けるため、天井を切り取らなくてはならない。
「『大引き梁』といって、大きな梁が何本も渡してあり、2階の床板の裏を1階の天井として見せる造りになっていたんです。その梁を一本切るといったら、その補強が大変なんです」と担当者。
新築ならば、2階への吹き抜け空間も、そう難しくない。しかし、古い建物は、決して太い材料を使用していないのが実状である。現状を見て強度を計算し、添え梁を入れていこうとするが、空間が狭くて工事が難しい。
「そこは、大工さんと知恵を出し合って、『出来ない』ということを考えず、『出来る』という思いから始めました」
結果、どうしても隠せない梁は見えているものの、リビングから2階へ吹き抜けのある階段が出来た。
また、2階は、もともと屋根裏空間だったため、明かり取りの小窓しかなかった。子ども部屋とするのなら、大きな窓を付けたい。しかし、子ども部屋の窓は家の正面にあたり、外観に影響する。
「吾妻建ちの三角形に、大きい窓をそのまま付けたら、窓が強調されて本来のイメージが壊れてしまう。それで、化粧庇を付けて和風らしさを出しました」と担当者。
12月初旬、細部に至るまでとことんこだわった改装は完成した。2階の梁は重厚感を漂わせ、どこかロッジの部屋のような楽しさも感じさせる。
「この家は私の祖父が建てました。担当の方が梁を出そうと言われて、それならとお任せしたんです。いい感じになって喜んでいます」と、オーナーであり、子どもたちの祖父にあたるYさんは言う。
代々の家族の暮らしを支えてきた梁は、子どもたちの夢を育み、これからの成長を優しく見守っていくことだろう。
梁を活かした2階の空間。コントラストも美しい(上)。かつては「アマ」と呼ばれ、ワラや薪などを置いたり、養蚕などの副業を行っていた(下)。囲炉裏のすすが染みこみ、木が腐らないという。
Y邸の吾妻建ちの外観。2階の妻面に子ども部屋の窓を大きく取り、外部にはバランスを見て化粧庇を付けている。
出来上がった子ども部屋。1本1本違う梁の造形が面白く、屋根裏の楽しい雰囲気が漂っている。
[今月のオーナー訪問]
株式会社K&M代表取締役社長 森田 武さん
〈三代目の改装は、この家の総仕上げ
〉
このようなリフォームは、過去に経験したことがなく、また、何回もするものではないですから、やはり地元の鷹栖建工さんにやってもらえば、いちばん信頼できると思ってお願いしました。
どこまでやってもらえるか期待もあったわけです。最近、テレビでリフォームの番組をやってますでしょう(笑)。まあ、そういうのとは違い、条件付きのリフォームだったので、大変だったと思います。
梁を出すというので、それならやってください、と。黒光りでびしっとやってもらえれば、いい感じになるのではないかと思ったんですが、イメージ通りに仕上がって、ありがたいですね。
白馬あたりのロッジの2階みたいですよ。職人さんは苦労されてたようです。外観も、吾妻建ちのイメージが変わらないようにしてもらいました。
リビングから2階へ上がっていくのは、いい感じですね。孫たちともお互いに顔を見られるし。
昔の家ですから、広いばかりで便利ではないんですけど、祖父から三代目で、ようやくこの家の総仕上げができました。やってもらってよかったなと思います。(Yさん談)
リビングから見る階段。吹き抜けになって、2階のフリースペースへ続く。
[技のトピックス]
寒い冬を暖かく過ごそう!
頭寒足熱で、「理想の暖房」
〈理想の暖房とは?〉
いよいよ寒い冬本番です! 寒さを少しでも和らげ、快適に過ごしたいものですが、理想的な暖房として昔から言われているのは「頭寒足熱」です。
【頭寒足熱(ずかんそくねつ)】
頭が涼しく、手足が暖かい状態を言います。下半身で暖められた血液が上半身で冷やされ、血行が良くなる、自然治癒力が高まるなど、体調を良い方向へ向かわせます。
頭が涼しく、手足が暖かい状態を言います。下半身で暖められた血液が上半身で冷やされ、血行が良くなる、自然治癒力が高まるなど、体調を良い方向へ向かわせます。
■エアコン
素早く部屋を暖めることができ、パワフルで快適な暖房を気軽に実現できます。温かい空気が上昇して足元に冷たい空気が入り込むときは、扇風機を天井に向けて風を送れば、部屋の空気をかきまぜて暖房効率をアップし、快適な室温をキープしてくれます。
■電気カーペット・アンカ・電気毛布
部屋全体を暖めるのには向きませんが、持ち運びが可能で手軽に使用できます。
■床暖房
部屋全体をムラなく暖めてくれる点が他の暖房との大きな違いです。頭寒足熱で理想的な暖房をキープできます。床暖房の効果をまとめました。
〈足元の冷たさが和らぐ〉
床から暖めるため、頭はスッキリ、足元はぽかぽかします。冷え性やリウマチに効くと言われます。
〈乾燥しすぎず肌がカサカサしない〉
風が発生しないので、のどの乾きや肌がカサ付くのを防ぎます。長時間過ごしていても、肌のみずみずしさは失われません。
〈家族の団らんが増える〉
床に座ってくつろぐ、のんびりした空間ができるため、床暖房のある部屋に家族が集まって一緒に過ごす時間が増える傾向があるようです。
〈お年寄りにもやさしい〉
暖かい部屋から寒い廊下などに出ると血圧と心拍数が急激に上昇し、脳卒中や心臓疾患を引き起こす原因になります。お年寄りはその危険がさらに高まりますが、床暖房の部屋から出た場合は変化が少なく安心です。
引用:リンナイ(株)のカタログ
[今月の特集は]
鷹栖建工株式会社が担当した砺波地方独特の住まいの改装を紹介しました。
梁を見せるということには、数々の苦労がありましたが、単に四角い現代的な空間を造っても意味がないという信念で、妥協することなく完成させました。
また、職人さんたちも、誠心誠意取り組み、このような苦労と達成感は新築では味わえないものと言えます。「住まいは三代で仕上がる」という言葉そのもののような改装です。
pdfデータはこちらからダウンロードできます。
Vol.03
[特集]住まいの「資産」を生かす
[TOPICS]頭寒足熱で理想の暖房
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