[特集]
由緒ある寺院を後世に引き継ぐ改修
〜細心の注意と技術で、本堂全体を持ち上げて補修〜
〈
ゆっくりと本堂を根太上げする〉
富山県新湊市にある浄蓮寺は、浄土真宗大谷派の寺院で二十代以上続く古刹である。時代を経た建物は、改修の必要に迫られており、準備期間を経て平成16年夏、改修工事に取りかかった。
工事を行うのは、本堂の床部分、回廊、内外壁などと、境内にある釣鐘堂で、傷みの激しい部分を中心に行った。
本堂の床下部分は、玉石を敷いた昔ながらの基礎になっており、湿気が多かった。これをやりかえるため、本堂全体を持ち上げることから始めた。
本堂の床をジャッキアップし、柱の周辺に枕木を井桁に組んで支えていく。柱の数は、約40本。井桁の数も同程度になった。
「手作業で、少しずつ組んで根太上げをしました。機械などで一気に上げてしまうと、建物がゆがんでしまうんですよ。ここが肝心なところでした」と、担当者は言う。
ゆがみが発生しないように、均等に上げていかなければならない。慎重な作業が必要だ。ある程度上がった頃、日本列島を台風23号が襲った。あまりの強風に、練習帆船海王丸が富山湾に漂着した台風である。
「心配で現場を見に行きました。張ってあったシートがはがれていた程度で安心しました。寺は、屋根の自重でもっているんですが、それで長年耐えてきてるんですね」
その重さを、1ヶ月以上をかけ、1メートル50センチの高さにまで持ち上げた。床下に作業機械を入れる必要があったからだ。
〈下ろす時も慎重に、同じ時間をかけて
〉
上げられた本堂の下で、基礎工事が始まった。新たに基礎を造るのではなく、これまで使われていた石を利用して、コンクリートで補強する形とした。いいものは残すという考え方からだが、耐久性は向上する。次の課題は、本堂を下ろすことだった。
「現状の位置にそのまま下ろすというのが、簡単そうで実は大変なことでした。寸法の出し方が今と違いますし、そのまま下ろすだけだと建物がねじれるんですよ」と、担当者。
作業を逆回転していくだけでなく、ねじれも直しながら下ろしていく。日数も同じくらいかかり、ようやく本堂は新しい基礎の上に建った。
続いて床組みに取りかかった。新しい材料で、在来工法通りに床を組んでいく。柱は、それほどゆがみもなく、そのまま使用したが、敷居は人々の出入りなどで傷みが激しく、新しい材料に取り替えた。
「ケヤキなんですが、近いところから調達できなかったので、県外から調達しました」と言う。
〈継承できるものは残しながら改修
〉
本堂の周囲を巡る回廊は、当初削って使用しようという考えもあったが、傷みの状況から新しいケヤキで張り替えることとなった。欄干は従来のものをそのまま残した。
内部の柱などは、落ち着いた茶色になっており、風格があった。これは、そのまま使用し、クリーニングを施した。クリーニング方法はいろいろあるが、歴史を残すとの意味で、今の雰囲気を保ちながら磨き上げた。内壁と外壁は、剥落した箇所もあり、塗り替えて白く美しくなった。
「すべて新しくするというより、勝興寺の改修もそうでしょうけど、今あるものを残しながら、悪い部分は直していくというのが、いちばんいいのではないでしょうか」と担当者は語る。
建具は、風雨にさらされるため、新しいものに入れ替えた。上部から明かりが採れるものだ。
改修は、もう一箇所、釣鐘堂にも行われた。
「釣鐘堂は、柱と天井の一部を新しくしました。柱は特に傷みが激しかったですね」
釣鐘堂も、屋根と鐘の重みだけで支える構造になっている。作業としては、まず屋根をレッカーで吊り上げて下ろし、古い柱を解体。新しい柱を組んで、屋根を再びのせるという形になる。しっかりとした新しい柱をもった釣鐘堂となった。
工期は、当初11月までとなっていたが、当初予測していた改修箇所以上に他の場所の傷みも多くあり、12月に完成となった。
翌年5月には、盛大に落慶法要が営まれた。
門徒総代の石灰孝男さんは、「たくさんの人に来ていただけました。皆さん、『よくなった』と喜んでおられましたよ」と語る。
寺院建築は、世代から世代へと受け継がれていくもの。今回の改修も、浄蓮寺の歴史のひとつとなり、補修された建物は門徒の皆さんの心の拠り所として長い時間を刻んでいくことだろう。
床部分は、根太上げをして改修し、再び元の位置へ戻した。改修中の根太上げをしているところ(左)。
改修工事が完了した本堂外観(上)。県外からケヤキを調達して新しくした回廊と階段(右)。
柱と天井部分を改修した釣鐘堂。屋根と鐘の重みだけで支える構造だという。
[今月のオーナー訪問]
浄蓮寺門徒総代 石灰 孝男さん
〈皆さんが待ちわびた改修でした
〉
私が総代になったのは3年ほど前からなんですが、その前から門徒の皆さんは、そろそろ直さないといけないという話はされてました。寺の裏方の人や世話しておられる尼子さんたちからも、「自分たちが生きている間に、何とかしてほしい」と言われまして、その思いに応えて、じゃあ改修しようかということになりました。
準備期間はあまりなくて、2年ほどでしょうか。門徒さんは、500人以上おられますが、おかげさまで寄付の方も集まりまして。皆さん、待ちわびておられたんですね。
改修は、牧田組の担当の人の腕にかかっていたと思いますよ。こちらは、どこをどう直すとかより、お願いするだけですから。
落慶法要の時は、びっくりするくらいたくさんの人が見えました。皆さん、口々に「よくなった」「よくなった」と感謝しておられましたね。改修した寺を見たら誰でもそう思いますよ。(談)
[技のトピックス]
今アルミで、住まいに上質でモダンな風を
三協アルミニウム工業株式会社
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[TOPICS] アルミでモダンな住まいを
[今月の特集は]
株式会社牧田組が担当した寺院の改修を紹介しました。古い木造建築物は、傷みがつきものであり、修復と再生をどうするかがポイントになります。
今回の例は、根太上げをして基礎を改修していますが、古い石をそのまま使ったり、保存がよくて残せるものは残そうという基本姿勢で行っています。新しくするのは簡単ですが、「よいものを残す」ことに継承があり、建物に人の心が通っていくのでしょう。
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Vol.05
[特集]由緒ある寺院を改修
[TOPICS]アルミでモダンな住まいを
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